なぜ画像圧縮が必要?――重い資料は“見てもらえない”
高解像度の写真やスクリーンショットを多用すると、PowerPointはすぐに巨大化します。メール添付できない、Teams/Zoomで配布に時間がかかる、開くたびにもたつく――こうしたストレスは、数枚の“未圧縮画像”が原因であることが大半です。PowerPointの[画像の圧縮(Compress Pictures)]を正しく使えば、見た目を保ちつつ容量を大幅に削減できます。
基本手順:最短3クリックで全画像を一括圧縮
- スライド上の任意の画像をクリックで選択(画像がひとつでも選ばれていればOK)。
- リボンの[画像の形式(図ツール-書式)]タブ → [画像の圧縮]をクリック。
- ダイアログで設定:
- 適用範囲:チェックを外す(=全画像に適用)。個別だけに効かせたいときはチェックを入れる。
- トリミング部分を削除:オン(容量削減のキモ)。
- 解像度:用途に合わせて選択(下表を参照)。
用途 | 推奨解像度(ppi) | 目安 | コメント |
---|
メール添付・チャット共有 | 96(電子メール) | 最小サイズ | 文字主体の資料向け。写真は粗くなる場合あり。 |
オンライン投影(フルHD) | 150(Web/画面) | バランス型 | 画面共有や会議室プロジェクタで見栄え良好。 |
印刷配布・高精細モニタ | 220(印刷) | 高画質 | 資料の写真品質を重視する場合に。 |
元画質維持 | High fidelity(既定/既定解像度) | 劣化なし | 容量は大きい。最終出力前の編集段階で。 |
仕組みと注意点:圧縮で“何が”変わるのか
- 解像度の再サンプリング:画像のピクセル数を用途に合わせて縮小。
- トリミング部分の削除:見えない切り落とし領域を実データから除去。これをオフにすると容量はほぼ減りません。
- 形式最適化:写真はJPEG、ロゴやUIなどはPNGが選ばれる傾向。透過や輪郭重視の画像はPNGのまま保持されやすい。
注意:圧縮は“可逆”ではありません。元画像は別ファイルで保管し、資料側では用途に合わせて圧縮するのが安全です。
高品質を保つコツ:劣化を最小化する実践テク
- スクショは等倍で扱う:拡大貼り付けは粗く見える原因。必要サイズで撮り直すか、外部で縮小してから挿入。
- ロゴ/アイコンはSVGやEMFを使用:ベクターは拡大縮小でも劣化しません(PowerPointはSVG対応)。
- 圧縮は一度で決める:繰り返し圧縮は劣化の累積に。最終段階でまとめて適用。
- 既定の圧縮を管理:[ファイル]→[オプション]→[詳細設定]→[画像のサイズと画質]で 「ファイル内の画像を圧縮しない」をチェックすれば、編集中の予期せぬ劣化を防止。
よくある設定の迷い:どれを選ぶ?どう使い分ける?
- 配布優先(メール/チャット):96〜150ppi+トリミング削除オン。
- 投影優先(会議/登壇):150〜220ppi。文字やUIが多い場合は150ppiで十分。
- 印刷優先:220ppi。写真を多用しない配布資料なら150ppiでも見栄えは保てます。
サイズを劇的に下げる“一歩進んだ”ワザ
- 犯人捜し:拡張子を.pptx → .zipに変更して解凍し、
/ppt/media
内の画像サイズを確認。巨大ファイルを個別に最適化。
- 背景画像の最適化:スライドの背景に設定した画像は圧縮の影響が薄い場合があります。外部でリサイズした画像に差し替えると確実。
- 「図の変更」で差し替え:配置・サイズ・影/枠線などの書式はそのまま、中身だけ軽い画像に置き換え可能。
- PDF出力の併用:閲覧専用の配布は、[名前を付けて保存]→PDF(標準/最小サイズ)でさらに軽量化。
Mac/旧バージョンのUI差分メモ
- Mac版:画像を選択 → [図の書式]→[画像の圧縮]。一部の旧Macでは[ファイル]→[ファイルサイズの圧縮]表記。
- Office 2010/2013:名称や配置はほぼ同様。解像度項目に「既定の解像度」があり、アプリのオプションで既定値を変更可能。
トリミングの落とし穴:消したつもりが残ってる?
PowerPointのトリミングは見かけだけ。圧縮時に[トリミング部分を削除]をオンにしない限り、切り落とし領域はデータとして残ります。情報漏えい対策の観点でも、機密箇所をトリミングした場合は必ず削除してから共有しましょう。
チェックリスト:圧縮前後に見るべきポイント
- 重要な写真が粗くなっていないか(拡大表示で確認)。
- UIキャプチャの細線/文字がつぶれていないか。
- ロゴのにじみが出ていないか(ベクター差し替えを検討)。
- 動画/音声は別メニューの[メディアの圧縮]対象(画像圧縮では軽くなりません)。
トラブル対処Q&A
- 圧縮ボタンがグレーアウト:画像が選択されていない可能性。SmartArtやアイコン(SVG)は別扱いのことがあります。
- 画質が落ちすぎた:[元ファイルを開き直す/図の変更で高解像度に差し替え]→解像度を一段上げて再圧縮。
- サイズがほとんど減らない:元画像がすでに小さい/PNG優勢な構成。トリミング削除の確認と、写真はJPEG最適化を検討。
実践レシピ:この設定で“だいたいうまくいく”
- 社内共有(画面投影&配布):150ppi、全画像、トリミング削除オン。
- お客様配布(印刷想定):220ppi、要点スライドのみ写真を高画質維持。
- 見積書・提案書(ロゴ/UI中心):150ppi、ロゴはSVG/EMF、スクショは等倍貼付。
まとめ:軽く、速く、きれいに
PowerPointの画像圧縮は、「トリミング削除」+「適切な解像度」+「一括適用」の3点を押さえるだけで効果絶大。編集中は“圧縮しない”設定で品質を守り、配布直前に最適化する運用がベストです。今日の資料づくりから、ぜひ試してみてください。
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