上のセルと一致する文字列を表示しない(空白に見せる)条件付き書式の作り方

この記事の目的と前提
上のセルと同じ文字列を「見た目だけ」消す方法をまとめます。対象は Excel と Google スプレッドシートです。どちらも、値そのものは残ります。並べ替えや集計は引き続き可能です。
前提として、1行目は見出し(項目名)、2行目からデータが入っている想定にします。例では A 列を使いますが、他の列でも考え方は同じです。
ミニFAQ|非表示は値を消すの?並べ替えや集計への影響は?
非表示は見た目だけです。セルの値は残ります。したがって、並べ替え、フィルター、小計、ピボットテーブルなどの集計に使っても問題ありません。印刷や画面表示では空白のように見えます。
条件付き書式「指定の値に等しい」での基本設定
まずは操作が少ない方法から説明します。A2 から下に向かって「上のセルと同じなら見えなくする」というルールを作ります。
範囲選択のコツ(A2 から選ぶ理由/見出しを除く)
最初の対象範囲は A2:A100 のように、見出し行を除いて選びます。A1 を含めると、A1 と A0 の比較になり、意図しない動作になります。データが増える可能性がある場合は、Excel のテーブル機能や、スプレッドシートの A2:A のような開放範囲を使うと拡張に強くなります。
「指定の値に等しい」で作る(同値判定・空白の扱い)
Excel の場合:
- 1. 範囲 A2:A100 を選択
- 2. ホーム → 条件付き書式 → セルの強調表示ルール → 指定の値に等しい
- 3. 入力欄に =A1 と入れます(先頭が等号)
- 4. 書式は後で調整するので、いったん任意のスタイルで OK
この設定は「A2 が A1 と同じならヒット」という意味になります。以降 A3 は A2 と、A4 は A3 と比較されます。
Google スプレッドシートの場合:
- 1. 範囲 A2:A を選択
- 2. 表示形式 → 条件付き書式 → ルールを追加
- 3. 形式ルールで「次の条件に一致」のプルダウンから「カスタム数式」を選び、 =A2=A1 を入力
- 4. 書式スタイルはあとで調整します
空白も同じとみなすかは運用で決めます。空白を対象外にしたい場合は、次の「数式」方式が便利です。
見えなくする方法(文字色=背景色/ユーザー定義表示「;;;」の注意点)
見えなくするやり方は大きく2つです。
- 文字色を背景と同じ色にする(白地なら文字色を白)
- Excel 限定:ユーザー定義表示形式に ;;; と入れる(表示だけ完全に消える)
「;;;」は表示を消すだけで値は残ります。関数や計算には影響しません。スプレッドシートには同等の表示形式はないため、文字色方式を使います。
ミニFAQ|空白も同じとみなす?大文字小文字は区別できる?
空白を同じとみなすと、空の連続も非表示になります。空白を無視したい場合は、「数式」方式で AND を使います。大文字小文字を厳密に区別したい場合は EXACT 関数を使います(後述)。
条件付き書式の「数式」を使った応用
より柔軟にしたい場合は「数式」を使います。空白除外、厳密一致、複数列への横展開などに対応しやすくなります。ここでも A 列を例にします。
空白を除いて上のセルと一致を判定(=AND($A2<>””,$A2=$A1) など)
Excel:
- 1. 範囲 A2:A100 を選択
- 2. 条件付き書式 → 新しいルール → 数式を使用して…
- 3. 数式に =AND($A2<>””,$A2=$A1) を入力
- 4. 書式で文字色=背景色、または表示形式 ;;; を選択
スプレッドシート:
- 1. 範囲 A2:A を選択
- 2. 条件付き書式 → カスタム数式
- 3. =AND($A2<>””,$A2=$A1) を入力
- 4. 文字色を背景と同じに設定
この式は「A2 が空でなく、かつ A1 と同じなら非表示にする」という意味です。
大文字小文字まで一致を判定(EXACT 関数の使い方)
大文字小文字を区別するには EXACT を使います。
- Excel/スプレッドシート共通: =AND($A2<>””,EXACT($A2,$A1))
この式なら「apple」と「Apple」は別扱いになります。区別しないなら、EXACT の代わりに =$A2=$A1 でよいです。
列をまたいで同じ行の他列も隠す(参照の固定と相対の考え方)
A 列で判定し、同じ行の B〜D 列も見えなくしたいときは、B2:D100 を選択してルールを1つ作り、数式は A 列を参照します。
- =AND($A2<>””,$A2=$A1)
ここで $A2 の「列記号だけ固定($A)」がポイントです。行番号は相対のままにすることで、各行で A 列を基準に判定できます。
ミニFAQ|表の途中から貼るとズレるのはなぜ?拡張時の範囲更新は?
貼り付け開始セルが A2 以外だと、比較対象が1行ズレます。常に「対象行の1つ上」を参照する形にしてください。範囲を広げる場合は、Excel はテーブル化、スプレッドシートは A2:A のような開放範囲にしておくと、行追加時も自動で適用されます。
表示だけ消す vs 値を消す:混同しやすい機能の比較
目的が近い機能をまとめて比較します。見た目だけを変えたいのか、元データを実際に消したいのかで選ぶ方法が変わります。
比較表(目的/元データ破壊の有無/並べ替え・集計への影響/復元性)
機能 | 目的 | 元データ | 並べ替え・集計 | 復元のしやすさ |
---|---|---|---|---|
条件付き書式(上のセルと同じなら非表示) | 見た目だけ空白に見せる | 残る | 影響なし(値は使える) | ルールを消せば元に戻る |
重複の削除 | 重複値を物理的に削除 | 消える(先頭1つは残る) | 結果に影響(行数が変わる) | 元に戻す操作が必要 |
別列で空欄表示(IF) | 表示用列を作る | 元列は残る | 表示列の集計に注意 | 数式を消せば元に戻る |
関連Tips|「重複の削除」は1つ目が残る/空白スペースや全半角に注意
「重複の削除」は、同じ値が続くと1番目の値が残り、以降が削除されます。また、末尾のスペース、全角半角の違い、改行コードの混入があると、見た目が同じでも一致しません。必要に応じて TRIM、CLEAN、SUBSTITUTE などで前処理すると安定します。
条件付き書式の編集・管理・クリア
一度作ったルールは、後から並び順や範囲を変更できます。複数ルールが重なると、上から順に評価されます。
ルールの並び順と停止(優先順位の影響)
Excel では「条件付き書式ルールの管理」で、上から順に評価されます。必要なら「次のルールの停止」を使い、上位ルールがヒットしたら下位を無効化できます。スプレッドシートでも、ルールは上から順に適用されるため、順番を見直すと意図どおりになります。
範囲の変更・複製・削除(ルールマネージャの使い方)
範囲を広げたいときは、Excel の「適用先」に新しい範囲を追加します。シートをまたぐ場合は、参照先が相対になっていないか確認してください。スプレッドシートでは、ルールをコピーして別範囲に貼るときに参照列が変わる場合があります。$ 記号の固定を見直してください(例:$A)。
ミニFAQ|別ブック・別シートで崩れる原因は?参照の固定で防げる?
別ブックや別シートにコピーすると、参照が相対のままでズレることがあります。列は $A のように固定し、行は相対のままにするのが基本です。ブックをまたぐ場合は、参照が切れることもあるため、同じブック内で設定してからシートごとコピーすると安定します。
周辺機能と実務のコツ(小計・入力補助・結合セル×フィルター)
条件付き書式と合わせて使うと便利な機能や、つまずきやすいポイントをまとめます。
小計機能の基礎(表示と集計の違い/グループ化と相性)
小計はグループごとに合計や件数を出す機能です。行の表示・非表示を切り替えるアウトラインが自動で作られます。条件付き書式の非表示は見た目だけなので、小計の計算には元の値が使われます。グループ化と併用する場合は、集計列と表示列を混同しないようにしてください。
空白セルへ上の値を入れて連続に見せる簡単な数式(別列で安全に)
見た目を連続にしたいときは、別列に表示用の数式を置くと安全です。例えば B 列に次のような式を入れます。
- B2: =IF(A2=A1,””,A2)
これで、上と同じ値なら空欄に、それ以外は値を表示します。表示用列を集計に使う場合は、空欄の扱いに注意してください。
結合セルのままフィルターは?制約と代替案(テーブル機能など)
結合セルがあると、フィルターや並べ替えで意図しない動作になりがちです。可能なら結合は避け、テーブル機能で見出しやデザインを整える方法がおすすめです。どうしても結合を使うときは、判定や集計は「結合していない別列」で行うとトラブルを減らせます。
ミニFAQ|見た目は同じなのに一致しない(スペース/全角半角/改行)
一致しない原因の多くは余分なスペース、全角半角の混在、改行の入り込みです。前処理として TRIM(前後と連続スペースの削除)、CLEAN(印字不可文字の削除)、SUBSTITUTE(特定文字の置換)を使うと安定します。置換は対象を限定して実行し、元データは必ずバックアップしてください。