スライドショーの[録画]で、声も表情もまるごと保存—ナレーション&発表者映像までしっかり記録できます

PowerPointの録画機能を使うと、スライド切り替えのタイミングやナレーション、ペン描画をそのまま保存でき、さらにPowerPoint 2019以降ならカメラ映像で発表者の顔も同時収録できます。ここでは、準備・録画・修正・書き出し・共有までを一気通貫で解説し、仕上がりを高める実践テクとトラブル対処も加えました。
解説の想定環境はPowerPoint 2021(バージョン2210相当)。Microsoft 365版でも基本操作は同じか、より高機能です。
スライドショーの録画
発表者の声や姿も収録する場合は、マイクとカメラが必要です。録画前に必ず動作確認を行い、大切なプレゼンは別名でバックアップを作ってから作業を始めましょう。
録画前チェックリスト
- 静かな場所で収録(空調音やキーボード打鍵音を避ける)。
- マイク入力レベルを確認(大きすぎて割れない・小さすぎて聞こえないを回避)。
- カメラ位置と目線を調整(レンズの少し下にノートを置くと視線が泳ぎにくい)。
- 照明は顔の正面やや上から(逆光を避ける。可能ならリングライト等)。
- スライドのフォント/色/コントラストを最終チェック(小さすぎる文字はNG)。
- 通知の一時停止(集中モード/おやすみモードをON)。
録画ボタン
開始場所は2か所から選べます。[スライドショー]タブの[録画]([設定]グループ)または[記録]タブの[録画]です。ボタン右の▼で「先頭から/現在のスライドから」を選択できます。ウィンドウ右上の[記録]ボタンからも直行可能で、その場合は選択中スライドが起点になります。
記録画面の各コマンド
[録画]を押すと全画面の録画ウィンドウ(発表者ツール風UI)が開きます。ここで音声・カメラ・ペンの切替や再生確認、クリアなどを操作します。
ウィンドウの大きさを変更
右上の[元のサイズに戻す]でサイズを変更できます。終了は[Esc]または[×]。カメラが有効なら右下にプレビューが表示されます。新しめのPowerPointでは、このプレビュー(旧称「カメオ」/現在は「レリーフ」)の形や位置の変更も可能です。
カメラや音声のチェック
- マイク(Ctrl+M)/カメラ(Ctrl+K)/プレビュー表示(Ctrl+J)の各アイコンでON/OFFを切替。無効時は斜線が表示。
- 右上の[設定]で使用デバイス(マイク・カメラ)を選択。
- Teams/Zoom等が起動中だとカメラが占有されることがあります。不要なアプリは終了。
記録の開始と停止
左上の[記録]で「3,2,1」のカウント後に開始。収録中はプレビュー左上の赤点が点灯します。途中で[一時停止]→[再開]が可能。[停止]後は[再生]でその場で確認できます。
録画のクリア
- 現在のスライドのみ消す/全スライドを消す、の2種類を選択可能。
- 取り直しは気軽に。細切れで収録→後で全体を通し確認、が効率的です。
ノート
上部中央の[ノート]で発表メモを表示。フォントサイズはクリックで拡大/縮小。語尾を整えた簡潔なメモにしておくと滑舌が安定し、視線も上がります。
スライドの経過時間と全スライドの時間
左下に「スライド番号/総枚数」「当該スライドの経過時間/全体時間」を表示。目安として1スライド15〜60秒を意識するとテンポ良くまとまります。
ペンの選択と使い分け
- レーザーポインター(Ctrl+L):注目点の指示に。色は事前に[スライドショーの設定]で変更。
- ペン(Ctrl+P):強調線や囲み。太さはツールバーから変更。
- 蛍光ペン(Ctrl+I):背景の上から透けるマーカー表現に。
- 消しゴム(Ctrl+E):誤記はすぐに削除。全消去ボタンも活用。
録画後の仕上げ
収録が終わったら、スライド単位で微修正→再生確認→最終書き出し、の順で完成度を上げます。
スライド単位でのやり直し
- 該当スライドを表示→[スライドショー]または[記録]タブから「現在のスライドから録画」。
- 不要なナレーション/タイミングは[クリア]でピンポイント削除。
タイミングと自動再生
- 記録時の切替操作は「タイミング」として保存され、スライドショーを自動再生できます。
- [スライド一覧]表示に切替えると、各スライドの再生時間がひと目で確認可能。
Inkやポインターの扱い
- 収録したペン描画はスライドに埋め込まれ、再生時に同じ軌跡で表示されます。
- 強調が多すぎると視線が散るため、1スライド1〜2箇所に絞るのがコツ。
ファイルサイズの最適化
- 録画を重ねるとPPTXの容量が増えます。[ファイル]→[情報]→[メディアの圧縮]で最適化。
- 不要になった録音や動画は必ず削除(クリア)してから保存。
ビデオの作成
共有・配信を想定するなら、MP4への書き出しが便利です。[ファイル]→[エクスポート]→[ビデオの作成](または[記録]タブ→[ビデオにエクスポート])。
解像度の選び方
- Ultra HD(4K):大画面配信用。文字が多い資料で鮮明さ重視。
- フルHD(1080p):汎用。社内配布・YouTubeアップロードなど。
- HD(720p):容量重視。メール添付やモバイル視聴が中心なら。
- 標準(480p):帯域が極端に限られる場合のみ。
あわせて[記録されたタイミングとナレーションを使用する]を有効にし、必要ならプレビューで最終確認。音量ムラが気になる場合は、再収録か外部ツールで正規化(ノーマライズ)を検討します。
プレゼンテーションを記録する – Microsoft サポート
配布・公開のコツ
- 社内共有:OneDrive/SharePointに保存→リンク共有。視聴端末の帯域を考え、1080p推奨。
- 学習用途:章ごと(5〜10分)に分割して視聴完走率を上げる。
- 字幕対応:動画公開後にWebVTTで字幕を追加するとアクセシビリティ向上。
トラブルシューティング
よくあるつまずきと対処をまとめました。困ったら上から順番に確認しましょう。
録画ボタンが押せない/グレーアウト
- 読み取り専用や保護ビューになっていないか確認。いったん別名保存。
- アドイン競合の可能性。アドインを一時無効化→再起動。
マイクが認識しない/音量が小さい
- Windowsの[サウンド設定]で既定の入力デバイスをマイクに設定。
- 自動音量調整(自動ゲイン)が音量ムラの原因になる場合はオフに。
- USBマイクは他アプリの占有解除(通話アプリを終了)。
カメラが真っ黒/使用中エラー
- Teams/Zoom/ブラウザ等でカメラが使用中なら終了。
- プライバシー設定でPowerPointのカメラ許可をオン。
音ズレ・映像カクつき
- 高負荷アプリを終了し、録画中は画面共有・重い同期を止める。
- PCを再起動→最初にPowerPointだけ起動して収録。
書き出しMP4が大きすぎる
- 解像度を一段下げる(1080p→720p)。
- [メディアの圧縮]実行→再書き出し。
- 長尺は章分けして複数ファイルに。
活用シナリオと運用のコツ
- 社内研修:スライド+顔出しで理解度UP。章ごとに小テストを別途用意。
- 営業資料:要点は60〜90秒で1テーマ。リンクで最新差し替えを徹底。
- オンボーディング:IT環境や業務フローを動画化し、更新時は該当スライドのみ再収録。
- フォトアルバム:BGM+切替効果でイベント記録を動画化。
保存前の最終チェックリスト
- 冒頭10秒に自己紹介と目的、末尾に要点の再掲と次アクション。
- スライドごとの音量差なし(必要なら該当スライド再収録)。
- 不要な長い沈黙がない(一時停止/再開を活用)。
- 個人情報・社外秘が映り込んでいない。
- 書き出し解像度とファイルサイズが用途に合致。
まとめ
PowerPointの録画機能は、ナレーション・ペン描画・切替タイミングに加えて、発表者の映像までワンストップで収録できる強力なツールです。録画前の環境づくりと簡潔なノート、スライド単位の取り直し、適切な解像度での書き出し——この3点を押さえるだけで仕上がりは大きく変わります。まずは短いスライドで一度通し収録→改善→本番、の順で慣れていきましょう。