合計値に合わせて円グラフの大きさを自動で変える:高さ×幅の倍率設定ガイド
合計値と円グラフサイズの基本
合計値に合わせて円の大きさを変えると、「割合」と「規模」を同時に伝えられます。
可視化では、同じ種類の円グラフをいくつも並べることがあります。たとえば、月ごとの内訳や店舗ごとの構成です。このとき、各円の大きさを同じにすると、構成比は比べられますが、合計の多さは伝わりにくくなります。合計値に合わせて円の大きさを変えると、「割合」と「規模」を同時に伝えられます。
ただし、円の大きさを合計値に合わせるときは、面積が合計値に比例するようにすることが大切です。直径や半径をそのまま合計値に比例させると、面積は二乗で増えてしまい、実際より差が大きく見えます。
本記事では、面積が合計値に比例するように、縦と横の倍率を同じ比率で調整する考え方と手順を、やさしい言葉で説明します。
一言で言うとどうなる?
合計値を0〜1に正規化し、その平方根を縦横の倍率として使えば、円の面積が合計に比例します。
円グラフの作成と初期設定
まずは通常の円グラフを作り、書式を整えてからサイズ連動をかけます。
最初に、通常の円グラフを作ります。ここではツールに共通する流れに絞って説明します。
- データを表にする(項目名と数値。合計や欠損の確認もここで行う)。
- データ範囲を選び、円グラフを挿入する。
- タイトル、凡例、データラベル(割合や値)を整える。
- 軸はないので、余白や色、並び順を軽く調整する。
この段階では、まだサイズは固定でかまいません。あとで倍率を適用して、円の直径(実質は高さと幅)を変えます。
割合と個数はどちらを使う?
目的が「構成のバランス」なら割合が便利です。規模感も伝えたいときは、ラベルに「値(または合計)」も併記します。割合しか表示しないと、サイズ可変の効果が伝わりにくい場合があります。
カスタマイズと複製のコツ
1つを丁寧に作り込んでから複製するのが最短ルートです。
円グラフは色やラベル位置で読みやすさが大きく変わります。先に1つの円を丁寧に整えてから複製するのが近道です。
- 色は意味でそろえる(例:同じカテゴリは同色)。
- 凡例は短く、順序は大きいものから並べると読みやすい。
- データラベルは外側に出すと重なりにくい。小さな区分はラベルを省略する判断もあり。
- 余白は狭すぎると窮屈に見える。ほどよい内側余白を保つ。
同じ見た目の円を複数並べるときは、「複製」機能を使うと、等間隔で配置できます。位置合わせのガイド(スナップ、整列、等間隔配置など)がある場合は併用すると整います。
同じ見た目を量産する最短手は?
元になる円を1つ作り込み、それを複製してからデータの参照先だけ切り替えるのが早いです。書式を後から揃えるより、最初に揃えたものを増やす方がずれにくく、手戻りが減ります。
データ範囲の変更と並べ替え表示
元表はいじらず、グラフ側で範囲と並びをコントロールします。
作った後で、集計期間や項目を変えることはよくあります。元の表は触らず、グラフ側で範囲を変更できるようにしておくと安全です。名前付き範囲やテーブル(行列の拡張に強い形式)を使うと、データが増減しても自動で追従します。
並べ替えは、合計が大きい順に並べると、色と凡例の対応が覚えやすくなります。円グラフは角度で順序が見えづらいので、規則性を作ると比較しやすくなります。
グラフだけ順序を変えられる?
多くのツールで、データの順序と表示順を分けて設定できます。グラフの並べ替えオプション(降順・昇順・手動)を使えば、元データを壊さずに表示順だけ揃えられます。
サイズ連動の考え方:面積∝合計値
円の面積が合計値に比例するように、縦横同率の倍率でサイズを決めます。
ポイントは「円の面積が合計値に比例する」ことです。面積は半径の二乗に比例します。そこで、半径(=直径の半分)や、高さ・幅の倍率は、合計値の平方根に比例させる必要があります。
具体的には、最小合計をmin、最大合計をmax、ある対象の合計をvとします。まずはvを0〜1の範囲に正規化します。
- 正規化値 r = (v – min) / (max – min)
- 最小サイズを s_min、最大サイズを s_max とします(単位はピクセルやポイント)。
- 面積比例のための倍率 a = sqrt(r) とし、最終サイズ s = s_min + a × (s_max – s_min)
この s を、高さと幅の両方に同じだけ適用すれば、円の面積は合計値に比例します。
固定サイズと合計連動の違いは、次の表のとおりです。
| 方式 | 向いている用途 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 固定サイズ | 構成比だけを比べたい | 配置が安定。作成が簡単 | 合計の大小が伝わらない |
| 合計連動 | 規模と構成を同時に見せたい | 規模感を直感で共有できる | 最小・最大の設定次第で印象が変わる |
最小・最大サイズはどう決める?
並べる個数と紙面の広さから逆算します。小さすぎるとラベルが読めません。大きすぎると隣と重なります。まずは、最小はラベルが読める下限、最大は行や列にきれいに収まる上限で試し、全体の密度を見て微調整します。
縦横の倍率をSQRT(平方根)で求める
正規化→平方根→サイズの順に計算すれば面積比例を保てます。
平方根は、ある数を二乗して元に戻る値のことです。面積を比例させたいとき、縦横の倍率は「正規化した合計値の平方根」になります。
計算の流れをもう一度整理します。
- 合計の最小値と最大値を決める(min, max)。
- 各対象の合計 v を 0〜1 に正規化する: r = (v – min) / (max – min)。
- 縦横に適用する倍率を a = sqrt(r) とする。
- 最終サイズ s = s_min + a × (s_max – s_min) を高さと幅に適用する。
サンプル:min=10, max=90, s_min=80, s_max=160 のとき、v=40 なら r=(40-10)/(90-10)=0.375、a=sqrt(0.375)≈0.612、s=80+0.612×(80)=128.96(約129)。
極端に小さい値があると、サイズ差が出にくいと感じるかもしれません。その場合は、min を「0」ではなく、観測された最小合計に合わせると、差がほどよく出ます。
0や外れ値があるときの扱いは?
合計が0の対象は、半径0(見えない)になります。表示したい場合は、最小サイズの下限を少し持たせます。非常に大きな外れ値があると、他が小さく見えます。外れ値だけ別枠で示す、あるいは最大サイズに上限を設ける方法があります。単位が混ざっていないかも確認します。人数と金額などが混在すると、比較の意味が薄れます。
実装手順:高さと幅の倍率を設定
min・maxを求めてから、r→a→sを計算し、高さと幅に同じ値を入れます。
考え方はどのツールでも共通です。ここでは、共通フローと代表的な設定ポイントをまとめます。
- 合計の最小値(min)と最大値(max)を求める。
- 正規化 r、平方根 a、最終サイズ s を表やフィールドで計算する。
- 円グラフのサイズ(高さと幅)に s を適用する(同じ値を両方に設定)。
ツール別のヒント:
- 表計算(Excel / Googleスプレッドシート)
- 列に min, max, r, a, s を計算する補助列を用意する。
- SQRT(平方根)関数を使って a を求める。
- グラフの書式設定で、高さと幅に s を入力する(単位は同じにする)。
- BIツール(一般)
- 集計列(合計)を作成し、ウィンドウ関数やレベル別計算で min と max を求める。
- 計算フィールドで r、a、s を定義し、マークのサイズまたはチャートサイズにバインドする。
- 最小・最大サイズはダッシュボード全体の密度を見ながら調整する。
固定サイズと併用できる?
できます。例えば、比較の基準として1列だけ固定サイズにして、他を可変にする方法があります。ただし、同じ行・同じ図の中で固定と可変が混ざると誤解を生むことがあります。章やセクションで分けるとよいでしょう。
応用例:ドーナツ、二重ドーナツ、補助円、3D
外径(高さと幅)に連動サイズを適用し、内径は読みやすさ優先で一定にします。
ドーナツグラフでも考え方は同じです。外径(=高さと幅)に s を適用します。内径(穴の大きさ)は、読みやすさを優先して一定にするのが基本です。中央に合計値を置くと、可変サイズの意味がさらに理解しやすくなります。
二重ドーナツでは、外側と内側で別の内訳を見せられます。サイズ連動は外径(全体の円)に対して行い、内側の輪は見やすさのため一定でもかまいません。
補助円付き円グラフは、1つの項目の内訳だけを別円で示す表現です。サイズ連動を使う場合、補助円は相対的な比較が主目的なので、外側の円だけ連動させ、補助円は一定でもよいでしょう。
3D円グラフは奥行きで面積感が歪むため、サイズ連動とは相性が悪い場合があります。サイズ連動を使うときは、平面の円やドーナツを推奨します。
ドーナツ中央に合計を入れる最短手順は?
中央のラベルまたはテキストボックスに、合計値の参照を配置します。表示形式は単位つき(例:件、円)にして、桁区切りを入れると読みやすくなります。
つまずき対策とミニFAQ
事前に下限・上限と並び方を決めるだけで、多くの不具合を避けられます。
よくあるつまずきと対処法をまとめます。
- 合計が0や空欄:最小サイズに下限を持たせるか、「データなし」と明示する。
- 表示単位の混在:同じ単位に揃える。別単位は別のグラフに分ける。
- ラベルが重なる:最小サイズを上げる、ラベルを外側に、または小さい区分のラベルを省略。
- 並び順がバラバラ:グラフ側の並べ替えオプションで統一する。
- サイズがバラつきすぎ:最大サイズに上限を設ける。外れ値を別枠にする。
サイズ可変はいつ使うと効果的?
規模の差が重要なときに向いています。店舗別売上の内訳、地域別人口の構成、月別の件数比などです。内訳だけを比較したい場合は、固定サイズの円が適しています。