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Access のレポートは、単なる一覧表ではありません。[グループ化]・[並べ替え]・[集計]を組み合わせることで、「誰に」「何が」「いつ」「いくら」を切り口ごとにまとめ、見やすく分析できる帳票を素早く作成できます。ここではレポートウィザードを軸に、実務で役立つ設定や設計のコツまで一段深く解説します。
レポート作成前に整えておくと良いこと
- 集計用の数値はクエリで事前に計算(例:
[売上]=[単価]*[数量]
)。レポートでの式は最小限に。
- 並べ替えやグループ化に使うフィールドは型を統一(日時/数値/テキスト)。Null は 0 や空文字に正規化。
- 並べ替えキーにインデックスを設定しておくと表示/印刷が軽くなります。
- レポートで使うフィールドだけを返す専用クエリを用意(過剰な列は処理を遅くします)。
ウィザードの基本フロー(おさらい+深掘り)
フィールド選択の考え方
- 左から右へ送った順にレポートの列順が決まります(後述のグループ/並べ替え指定は先頭側に来ます)。
- 「見出し→キー→明細」の順で並べると後の調整が少なく済みます。
- 複数のテーブル/クエリからの取り込みは、結合が正しく効く構成かを先にクエリで確認しておくと安全です。
グループレベルの指定(最大4段)
- 部門→担当者→商品…のように上位から順に追加します。
- 日付でまとめたい場合は月/四半期/年ごとの切り口にしたクエリ列を用意(例:
Format([納入月日],"yyyy-mm")
)。
- テキストの頭文字でまとめるなら、
Left([得意先名],1)
のような補助列を用意すると柔軟です。
並べ替えと集計の指定
- 並べ替えは「グループ内の明細順」を決める重要設定。日時は昇順、金額は降順など目的に合わせて。
- [集計のオプション]では「合計・平均・最大・最小・件数」を選択。集計対象は数値/日時/テキストで挙動が異なります。
- 「件数」は Null を含む/含まないの違いに注意(フィールドの値の有無で結果が変わります)。
レイアウト選択の実務ポイント
- 列数が多いなら「ブロック」や「ステップ」で可読性を優先。横向き印刷も検討。
- 「1ページに収める」を安易にオンにすると列が切れることがあります。後で列幅を微調整する前提でオフにするのも手。
- 大きな数値列は右寄せ・千位区切り(#,##0)・マイナス赤表示などの体裁を早めに整えると仕上がりが早いです。
作成後の調整(レイアウトビュー/デザインビュー)
よくある体裁調整チェックリスト
- 列幅:数値が「####」なら幅不足。見出しと明細はセットで広げる。
- 桁区切り/書式:金額は
#,##0
、消費税は 0.0%
などに。
- 改ページ:グループごとに改ページするかは紙運用に合わせて決定。
- 繰り返し見出し:次ページ以降もヘッダーを繰り返す設定にすると読みやすさが段違いです。
エラーインジケーター対処
- 「ページ幅超過」:レポート幅+余白が印刷幅を超過。列を内側へ、余白を狭く、横向きに変更のいずれかで解消。
- 「#Name?」:コントロール名とフィールド名/式の参照が衝突。コントロール名を変えるか式を
= [フィールド名]
に修正。
- 「#Error」:0 除算や Null 計算が原因。
Nz()
で保護(例:=Nz([分母],0)
)。
[グループ化、並べ替え、集計]ウィンドウの活用
詳細設定でできること
- グループヘッダー/フッターの有無を切り替え(小計や見出しの置き場を決める)。
- まとまりの単位を変更(日時:日/週/月/四半期/年、テキスト:先頭 n 文字など)。
- ページの分割/保持(Keep Together)で、グループの途中改ページを抑止して読みやすく。
- 並べ替えキーの複数指定(第2・第3キー)で安定した順序を実現。
集計の実践テクニック
小計・総計・割合の出し分け
- 小計は「グループフッター」に配置、総計は「レポートフッター」に配置。
- 割合(構成比)は「= [売上] / Sum([売上])」のようにグループ範囲で分子分母を合わせる。
- 累計・連番はテキストボックスの[集計実行]を「グループ」または「全体」に設定。
条件付き書式で強調
- マイナス値を赤・太字、しきい値超過を背景色で強調。
- 最新月のみ色を変えるなど、日付ベースの条件も効果的。
印刷・配布を見据えた設計
- 用紙:A4 縦/横、余白(上下左右)を実プリンタに合わせて設定。
- ページ情報:フッターにページ番号、印刷日、担当者名を入れると配布後も識別しやすい。
- PDF 出力:定型帳票は PDF 保存で誤改変を防止。ファイル名に年月を含めると検索性が上がります。
パフォーマンスとメンテナンスのコツ
- 「重い」と感じたら、レポート側の式を減らし、クエリで事前集計・整形。
- 不要な列や重いサブレポートを削減。必要なときだけサブレポートを表示する条件を設ける。
- 並べ替え・グループキーに適切なインデックスを付与(テーブル設計側)。
よくある要件への設計例
月次レポートで「年月別×商品別の売上小計と総計」を出す
- クエリに
YearMonth: Format([納入月日],"yyyy-mm")
を追加。
- グループ1:YearMonth、グループ2:商品ID。
- 並べ替え:納入月日 昇順、売上 降順。
- 集計:売上 合計(グループフッターとレポートフッターの両方に)。
「上位10件」だけを印刷したい
- クエリ側で TOP 10 を指定(集計や並べ替えをクエリで完結)。
- レポートは単純な表形式にして高速化。
トラブルシューティング
- 集計が合わない:グループ単位が想定と違う/Null の扱い/フィルター漏れを確認。
- 改ページが多い:Keep Together を見直し、段落間余白やフォントサイズを調整。
- 文字が溢れる:CanGrow/CanShrink(拡大/縮小)の設定で折り返しを許可。
仕上げのチェックリスト(配布前の最終確認)
- タイトル・日時・版(Rev)・担当者名の明記。
- ページ番号(例:Page X of Y)と総件数の表示。
- 小計と総計の整合、端数処理(四捨五入/切り捨て/切り上げ)の統一。
- 印刷プレビューでページ区切り・見出しの繰り返しを目視確認。
まとめ
レポートウィザードは、フィールド選択→グループ化→並べ替え→集計→レイアウト選択までを一気通貫で支援してくれます。作成後は「グループ化、並べ替え、集計」ウィンドウとレイアウト/デザインビューで体裁とロジックを磨き込めば、現場で使える帳票に仕上がります。日付の切り口(年月・四半期)や補助列をクエリで用意しておく、Null/型の整備、書式・条件付き書式・改ページの最適化――この三点を意識すれば、読みやすくて速いレポートが安定して作れます。
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