表の分類と割合をきれいに見せる:サンバーストグラフ入門
サンバーストグラフを作成する前の表の準備
サンバーストグラフは、親から子へと広がる階層データを同心円で表すグラフです。まずは、元になる表を正しく整えることが大切です。ここでは、最低限そろえるべき列や、よくあるつまずきを先に直す手順をまとめます。
階層列と値列の基本(親→子→…→値を定義)
階層列とは、上の階層から順に並んだ分類の列のことです。例として「地域 → 国 → 都市」のように、左ほど親、右ほど子になります。値列とは、合計したい数値(件数、売上、割合の元になる数)を置く列です。
- 列の並びは、親から子へと左から右にそろえる
- 1行は「ひとつの末端カテゴリ(葉)」を表す
- 値列は数値型にしておく(文字列の数字は直す)
- 階層の途中で空欄を作らない(親が不明なら「不明」などのラベルを付ける)
簡単な例:
- 地域: アジア / 国: 日本 / 都市: 東京 / 件数: 120
- 地域: アジア / 国: 日本 / 都市: 大阪 / 件数: 80
- 地域: ヨーロッパ / 国: フランス / 都市: パリ / 件数: 40
このように、各行が末端の都市を指し、値の合計が全体になります。
事前チェックリスト(空白・合計行・重複・テキスト数値)
作成前に、次のチェックを行うとエラーや読みにくさを避けられます。
- 空白セルがないか(特に親の列)
- 合計行や小計行が混ざっていないか(グラフ側で自動集計されるため不要)
- 重複行がないか(同じ葉を重ねて数えないよう注意)
- 値列が文字列になっていないか(右寄せ、桁区切り、通貨記号の有無を確認)
- カテゴリ名の表記ゆれ(「米国」「アメリカ」など)をそろえる
表記ゆれは、置換や参照表で統一します。値列の文字列化は、不要な記号を削除して数値に変換します。
並べ替えとグループ化の考え方
サンバーストは、親ごとの合計と配下の比率が見やすくなる並び順が合います。次の考え方を参考にしてください。
- 親階層は大きい順または意味のある順(例:上位市場→中位→下位)
- 子階層は親の中で大きい順に並べると、見つけやすい
- 「その他」を作る場合は、一定の基準(例:全体の1%未満)でまとめる
- 分岐が多すぎる場合は、階層を1段減らすか、上位カテゴリでグルーピングする
読み手に伝えたい物語(例:上位3カテゴリの構成比)に合わせて、順序を設計します。
ミニFAQ:見出し列はいくつまで作れる?(はい/いいえ形式で簡潔に)
はい:一般的なツールは複数の階層列に対応します。親→子→孫のように3段以上でも使えます。
いいえ:どの段でも空欄のままは推奨されません。空欄が多いと、意図しない集約や「未分類」が増えます。
サンバーストグラフの作成手順
ここでは、共通ステップの後に、挿入メニューから直接作る方法と、おすすめグラフから選ぶ方法の2通りを説明します。どちらも、元の表が整っていれば短い手順で作成できます。
共通ステップ(データ選択→挿入タブ→グラフ領域の準備)
- 階層列と値列を含む範囲を選択する
- 挿入タブを開く
- グラフを挿入できる空き領域を確保しておく(重ならない場所)
表にフィルターや合計行がある場合は、一時的に外しておくと安定します。
分岐1:階層構造グラフの挿入(場所・バージョン注意)
挿入タブのグラフの一覧から、サンバーストを選ぶ
- サンプルが表示されたら、データ範囲が正しいかを確認する
- 階層列の順序がおかしい場合は、選択範囲か系列の設定を見直す
ツールのバージョンによっては、サンバーストが「階層構造」カテゴリの中にあります。見つからない場合は、更新状況やアドインの有無も確認します。
分岐2:おすすめグラフから作成(自動提案の活用コツ)
挿入タブの「おすすめグラフ」を開く
- 提案の中から、サンバーストが候補に出ていれば選ぶ
- 候補にないときは、階層列の構成や範囲を見直して再試行する
おすすめに出ない原因として、階層列が1列しかない、値列が空、合計行が混ざっている、などが考えられます。まずは表側を整え直すのが近道です。
補足:複合グラフは[おすすめグラフ]か[複合グラフの挿入]から(選定基準)
サンバーストと他のグラフを組み合わせたい場合は、複合グラフを検討します。とはいえ、サンバーストは面積で比率を伝えるグラフなので、棒や折れ線と同じ軸で比較するのは難しいことがあります。
- 同じ図内で別の量を見せたいときは、グラフを分けて配置する
- 一つのストーリーに絞ると、解釈がぶれにくい
ミニFAQ:合計列があるとエラーになる?(はい/いいえ)
はい:合計行や小計行をそのまま含めると、二重に集計されることがあります。
いいえ:明確に末端の行だけを残し、合計はグラフ側に任せれば問題ありません。
ラベル(数値)の表示
ラベルは、値を読むための一番の手がかりです。ここでは、値・割合・表示形式を整えて、重なりを避けるコツを紹介します。
値・割合・合計比の切り替え
サンバーストは、値そのものか、全体に対する割合で読む場面が多いです。読み手が何を知りたいかに合わせて切り替えます。
- 値を見たい:件数や金額を表示する
- 割合を見たい:全体比のパーセンテージを表示する
- 階層の中での比率:親に対する割合を注記で補う
用途に応じて、凡例や注記で「このラベルは何を示すか」を明記します。
小数点・単位・桁区切りの設定
- 小数点は意味のある桁に丸める(例:割合は1桁、金額は0桁)
- 千の桁区切りを入れて読みやすくする
- 単位(件、個、円、千円、万円など)をタイトルや注記にそろえる
単位の不一致は誤解のもとです。表もグラフも同じ単位に合わせます。
ラベルの重なり・省略記号への対処
サンバーストは扇形が細かくなると、ラベルが重なったり、省略記号になることがあります。次の工夫が役立ちます。
- 小さいカテゴリは非表示にして、凡例で補う
- 階層の一部だけラベルを表示し、詳細はツールチップで伝える
- 対象のカテゴリを一時的に強調し、他を薄くする
読み手が迷わないよう、どこを省略したかを注記に残します。
ミニFAQ:中心の合計値は表示できる?(可否と代替)
できない場合がある:中心に自動で合計を出さないツールもあります。
代替案:中心にテキストボックスで合計を置く、注記で全体値を書くなどで補えます。
グラフタイトルのセル参照はできない
一部の環境では、グラフタイトルをセルに直接リンクできないことがあります。ここでは、その理由の背景と、代わりの方法を紹介します。
Office 2016以降の新しいグラフと従来の相違点
バージョンによって、グラフ機能の作りが異なります。新しい形式のグラフでは、タイトルやラベルの扱いが従来と変わり、セル参照の動作が制限される場合があります。見た目が似ていても内部の仕様が違うため、同じ手順でリンクできないことがあります。
代替案:テキストボックス・名前定義・連結で擬似参照
次の3つは、手軽で再現性のある回避策です。
- テキストボックスにセルを参照して表示させ、グラフの中心や上に配置する
- 名前定義を使い、セルの内容を参照する図形を作って配置する
- グラフ自体のタイトルは固定文にして、変動部分は注記やサブタイトルに出す
これらは自動更新にも対応しやすく、共有時にも崩れにくい方法です。
ミニFAQ:更新時にタイトルを自動で変える方法は?(手軽な手法)
テキストボックスをセルにリンクして配置する方法が簡単です。
更新のたびに式が再計算され、表示が変わります。
ドーナツグラフとサンバーストグラフの違い
どちらも円形で割合を表すグラフですが、得意分野が異なります。違いを理解すると、目的に合った選択ができます。
比較:表現できる階層・読み取りやすさ・向くデータ量・凡例
次の表は、両者の主な違いをまとめたものです。
| 項目 | ドーナツグラフ | サンバーストグラフ |
|---|---|---|
| 表現できる階層 | 1階層(多くても同心円2〜3) | 複数階層(親→子→孫…) |
| 読み取りやすさ | 少カテゴリで直感的 | 多階層でも全体と内訳が分かる |
| 向くデータ量 | 少数カテゴリ、強調対象が明確 | 中〜大規模の階層データ |
| 凡例・注記 | シンプルに収まる | 情報量が多いので注記が重要 |
| 伝えたいこと | 上位の比率 | 階層構造と配分 |
使い分けの目安として、カテゴリ数が少なく、階層が浅いならドーナツ。階層の関係まで見せたいならサンバーストが合います。
代表的な利用シーン(カテゴリ内訳、製品ポートフォリオ等)
- 組織の部門→チーム→担当者の構成比
- 製品カテゴリ→シリーズ→品番ごとの売上比
- 地域→国→都市の人口や件数の内訳
読み手がたどる順路(上から下へ)に合わせて階層を設計すると理解が速くなります。
ドーナツの中に円グラフがあるグラフの作成方法(簡潔手順)
ドーナツの中心に別の円を重ねると、2つの指標を並べて見せることができます。次のように作成します。
- 円グラフ(内側)を作成する
- ドーナツグラフ(外側)を作成する
- 2つのグラフを同じ中心に重ねる(位置合わせ)
- 配色とラベルが干渉しないように調整する
ただし、指標の意味が混ざると読み取りが難しくなるため、目的がはっきりしているときに使います。
ミニFAQ:小さいカテゴリが多いときはどちらが読みやすい?(判断基準)
サンバースト:親ごとにまとめられるため、全体像を保ちやすいです。
ドーナツ:小さい扇形が増えやすく、区別が難しくなることがあります。カテゴリを統合してから使うと良いです。
仕上げの見やすさ調整と配色
最後に、色・順序・凡例で仕上げます。ここでの工夫が、読み手の理解速度を大きく左右します。
階層ごとの色設計(親色と子色の関係)
- 親には基準となる色を割り当て、子は同系色で明度や彩度を変える
- 重要な親は濃い色、そうでない親は淡い色にして主従を明確にする
- 同じ親に属する子が一目で分かるよう、色の家族をそろえる
色の数が増えたら、色覚多様性に配慮したパレットを使うと安心です。
並べ替えとハイライトの使い方(重要カテゴリを目立たせる)
- 大きい順に並べ替えると、注目点が見つけやすい
- 伝えたいカテゴリだけ彩度を上げ、他は淡くする
- 注目点には外側の太さやラベルの書式で差を付ける
色に頼りすぎず、テキストの注記でも強弱を補います。
凡例と注記の配置(スマートな説明)
- 凡例は近くに置き、視線移動を減らす
- 注記で、単位・集計ルール・省略した条件を簡潔に書く
- 図の外に説明をまとめ、扇形の中は混雑させない
共有資料では、凡例や注記が読める文字サイズかも確認します。
ミニFAQ:色が足りないときの回避策は?(実用テク)
同系色の明暗で階調を作る
枠線やハッチ(模様)で区別する
重要でないカテゴリを「その他」にまとめる