エクセルのセルに入った’(シングルクォート)を消す方法
‘(シングルクォート)の正体と基礎
セルの先頭に入っている半角の記号 ‘ は、エクセルでそのセルを文字列として扱う合図です。たとえば 0123 のような値を先頭の 0 を保ったまま入力したいときに、頭に ‘ を入れると、エクセルは計算せず文字として保存します。このとき計算はできません。合計や平均を出そうとしても、文字列なので数式が対象外になったり、期待と違う結果になります。
‘ は画面上で左寄せに見え、セルの左上に警告マークが表示されることがあります。これは「数値が文字列になっています」という注意です。’ を消して数値に戻すと、計算や並べ替え、グラフ作成などが意図どおりに動きやすくなります。
一方で、品番や郵便番号のように、先頭の 0 を残したいデータでは ‘ が役立つ場面もあります。どのセルから ‘ を外すかは目的次第です。この記事では、’ を外したいときの代表的な方法を、少量から大量まで順に紹介します。
‘は印刷されますか?
通常、’ は印刷されません。画面で入力の合図として見えるだけです。ただしセル内容をそのままテキストとして書き出す処理を行うと、’ を含んだまま出力されることがあります。
いちばん簡単:警告マーク(スマートタグ)から数値に変換
セルの左上に黄色い警告マークが出ているなら、もっとも簡単な直し方があります。これは対象セルを選ぶだけで、エクセルが提案する修正を適用する方法です。少量の修正に向いています。
手順
- 警告マークが付いたセルを選ぶ。
- セルの左横に出る警告アイコンをクリックする。
- メニューから「数値に変換」を選ぶ。
- 同様のセルが複数あるときは、列全体を選んでから同じ操作を行う。
この方法は、’ を含む「数字だけの文字列」を数値に戻すときに効果的です。元の見た目や小数点、桁区切りなどはセルの表示形式に依存します。必要に応じて表示形式を「数値」や「標準」に変更してください。
注意点
- 英字や記号が混ざる文字列は「数値に変換」の対象外です。
- 警告マークが表示されないブック設定の場合、この方法は出てきません。
- 列全体に一括で適用するときは、範囲選択の抜け漏れに注意します。
警告マークが出ないときは?
ブックやセルのエラーチェック設定が無効だと、警告マークは表示されません。ファイル単位の設定でエラーチェックを有効にするか、他の方法(区切り位置、形式を選択して貼り付け)を使います。
区切り位置指定ウィザードで一気に文字列解除
大量のデータを一括で直したいときは、「区切り位置指定ウィザード」が役立ちます。もともとデータの区切りを指定して列を分割する機能ですが、区切りを変えずに実行するだけで、文字列として記録された数値を一度に数値化できます。
手順(基本)
- 文字列の数値が入った列全体を選ぶ。
- データタブから「区切り位置」をクリックする。
- ウィザードで「元のデータの種類」は適切な方を選ぶ(多くは区切り記号)。
- 区切り記号の設定は変更せず次へ進む。
- 「列のデータ形式」を「標準」にして完了する。
実行すると、’ が付いた数字だけのセルは数値になります。テキストや文字が混じるセルはそのまま残ります。途中で列のデータ形式を「文字列」にしないよう注意してください。目的は文字列を数値へ戻すことです。
応用:分割と同時に整形
- CSVから取り込んだ「姓 名」の列を、スペースで分割して姓列・名列を作る。
- 日付や時間が文字列で入っている場合は、適切な区切りで分けたあと表示形式を日付や時刻に整える。
氏名の列を姓と名に分けることもできますか?
できます。区切り記号でスペースやカンマを選び、プレビューを見ながら分割します。分割そのものは ‘ の解除とは別機能ですが、同じウィザードでまとめて処理できます。
形式を選択して貼り付け:乗算×1/加算+0で数値化
セルの中身を計算して数値化する方法です。任意の空セルに 1 または 0 を入力し、それをコピーして対象範囲に「形式を選択して貼り付け」を行います。少量にも大量にも使え、選択範囲を自由に決められる点が便利です。
共通手順
- 空いているセルに 1(または 0)を入力してコピーする。
- 文字列の数値が入った範囲を選ぶ。
- 右クリックまたは貼り付けメニューから「形式を選択して貼り付け」を開く。
- 演算の項目で、1 を使うなら「乗算」、0 を使うなら「加算」を選ぶ。
- OK を押す。文字列の数値が数値に変わる。
使い分けの目安
- 乗算×1 は元の値に影響を与えにくく、一般的な場面で使いやすい。
- 加算+0 は合計の検算など、0 をベースに扱う考え方に慣れていると直感的に選べる。
注意点
- 演算を行うため、日付や時刻などの特殊な文字列に適用すると見た目が変わることがあります。
- 貼り付けオプションの並びはバージョンや環境で異なります。項目名が少し違っていても、演算の意味は同じです。
- 数式が入っているセルに適用すると、結果が上書きされます。必要なら値だけの範囲に限定してください。
人によって貼り付けオプションが違うのはなぜ?
エクセルのバージョン、リボンの表示設定、使用しているプラットフォーム(Windows/Mac)などで表示が少し異なるためです。名称やアイコンが違っても、演算の考え方は共通です。
書式のコピー/貼り付けで見た目だけ戻す
セルの値はそのままに、見た目の設定だけを整えたい場面では「書式のコピー/貼り付け」を使います。これは値を変えずに表示形式や罫線、色などを別のセルの状態に合わせる機能です。’ の直接解除ではありませんが、文字列書式が原因の見た目を揃えるのに向いています。
手順
- 正しい表示になっているセルを選ぶ。
- ホームタブの「書式のコピー/貼り付け」をクリックする。
- 1回だけ貼る場合は1回クリック、連続で貼る場合はダブルクリックする。
- 対象セルを順にクリックして、見た目を合わせる。
コツ
- ダブルクリックすると、Escを押すまで連続で貼り付けできます。
- 罫線や塗りつぶしも一緒に移るため、必要に応じて貼る範囲を絞ります。
連続で貼るコツはありますか?
書式のコピー/貼り付けボタンをダブルクリックしてから貼りたいセルを次々にクリックします。終わるときは Esc を押します。
空白セルを貼り付け:値は維持して書式だけ消す
見た目の設定だけを取り除きたいときは、「空白セルの貼り付け」を使う方法があります。空のセルをコピーして貼り付けるときに、値を上書きせず書式だけを置き換えるイメージです。値を壊さずに整えられます。
手順
- 空のセルを1つ用意してコピーする。
- 書式を消したい範囲を選ぶ。
- 形式を選択して貼り付けで「書式」を選ぶ、または空白セルの貼り付けを選択する。
- 値はそのまま、見た目だけがクリアされる。
活用例
- 色や罫線がバラバラな表を一度まっさらにして、あとから統一の書式を適用する。
- 文字列の数値が左寄せのままになっているとき、表示形式を標準に戻して揃える。
Deleteキーで書式が消えないのはなぜ?
Deleteキーはセルの値を消す操作です。見た目の設定(表示形式、色、罫線など)は残るため、書式を消したい場合は「セルの書式のクリア」や、ここで紹介した貼り付けの方法を使います。
うまくいかない原因と対処(見かけの空白/ハイパーリンク/オプション差)
‘ を外したのに期待どおりに計算できない、または見た目が直らないときは、次のポイントを順にチェックします。
チェックリスト
- 見かけの空白が混ざっていないか
- 先頭や末尾、途中に全角や半角の空白が紛れていると、数値に見えても文字列のままです。置換で空白を削除し、再度数値化します。
- ハイパーリンクが残っていないか
- インポートやコピーで自動的にリンクが付くことがあります。リンクをまとめて解除してから整えます。
- 表示形式が文字列のままになっていないか
- 数値に変えても、表示形式が「文字列」だと左寄せのままです。「標準」や「数値」に戻します。
- 貼り付けオプションの差で迷っていないか
- 項目名が違っても、目的は「演算で数値化」「見た目だけ戻す」の2軸で考えると整理しやすいです。
- 数式セルを上書きしていないか
- 一括操作で値に置き換えると、数式が消えます。必要なら事前に範囲を分けます。
ミニ手順:ハイパーリンクのまとめて解除
- 範囲を選ぶ。
- 右クリックからリンク解除、またはセルの書式のクリアを選ぶ。
- 形式を選択して貼り付けで値だけにする方法もあります。
ハイパーリンクをまとめて外すには?
範囲選択後に右クリックのメニューからリンク解除を選びます。リボンのコマンドでも可能です。広い範囲に一度に適用できます。
目的別おすすめ手順の早見表
目的やデータ量によって、最短の方法は変わります。次の表で選び方の目安を確認してください。
| 方法 | 向いている量 | 元データへの影響 | 速さの目安 | 失敗しやすい点 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 警告マークから数値に変換 | 少量 | 値を数値化(見た目は表示形式次第) | 速い | 警告が出ないと使えない | 高い |
| 区切り位置指定ウィザード | 大量 | 文字列の数値を一括で数値化 | 中 | 設定を間違えると分割される | 高い |
| 形式を選択して貼り付け(×1/+0) | 少量〜大量 | 計算で数値化、範囲を柔軟に選べる | 中〜速 | 日付等の特殊文字列は注意 | 高い |
| 書式のコピー/貼り付け | 見た目調整 | 値はそのまま、見た目のみ変更 | 速い | 値は変わらないため根本解決ではない | 中 |
| 空白セルの貼り付け | 見た目調整 | 値はそのまま、書式だけクリア | 中 | 貼り付け範囲の選び間違い | 中 |
どの方法を優先すべき?
少量なら警告マークからの変換、大量なら区切り位置、範囲を自由に選びたいなら形式を選択して貼り付けが使いやすいです。見た目だけ直したい場合は書式のコピーや空白セルの貼り付けを選びます。